2017年11月23日木曜日

まだまだ佃煮は作れます。

9月に回収した越喜来湾の付着板には、数千個体のヨコエビが生息していました。
サンプル瓶はまさにヨコエビの佃煮状態…。
その後は水温も下がり、そろそろ表在性の動物も減ってきたかなと思ったのですが…
今度はおびただしい量のワレカラが生息していました。
今月のメニューはワレカラの佃煮ですね。
回収したワレカラが入った遠沈管を水深ごとに並べてみたのですが、
付着生物の生物量や環境データと比べることで、
いろいろ面白いことがわかってきそうです。

2017年11月22日水曜日

いよいよ冬ですね

11月も終わりが近づき、いよいよ本格的に冬を感じる季節となりました。
松島湾に設置した付着板のコケムシたちも、
夏や秋に多い種から冬に多く付着する種へと、種組成が遷移しています。
9月はまだまだ夏の様相を呈していましたが、
ようやく付着板を見ても季節の移り変わりがわかる季節となりました~。

2017年11月5日日曜日

コケムシがたくさんいる場所は・・・

ご無沙汰しております。
相変わらず更新が不定期ですみません。。
たまに思い出したときにでもこうして訪問していただけると、大変ありがたいです。
たとえこのブログのことは忘れても、コケムシのことは忘れないであげてくださいね…。

さて、そろそろ何か書かないと、いよいよ忘れ去られてしまうと思うので…

先月、新たに論文が出ました。

Hirose M. and Kawamura T. (2017)
Distribution and seasonality of sessile organisms on settlement panels submerged in Otsuchi Bay.
Coastal Marine Science, 40 (2): 66–81.

岩手県大槌湾の水中垂下物上でみられる付着生物の種組成と季節変動に関する論文です。
水中垂下物というとなかなかイメージできませんが、
たとえば養殖施設や網やブイなどの人工物のことです。
それら湾内に設置したものにどんな生き物が付くのかな~ということを、
震災後の大槌湾で付着板を設置して調べた論文です。

残念ながら台風や冬の嵐で流されるなどして、
全ての地点で全期間のデータを得ることはできませんでしたが…
それでも、地点ごとに付着する生物の種類や量に違いがみられました。
論文の中では、各地点における付着生物の種組成や現存量と、
その場所の環境特性との関連を考察しています。

ちなみに、大槌湾では湾奥南側でコケムシの多様性と現存量が特に高い傾向があります。
コケムシを集めたいなら、湾奥南側がオススメですよ!


2017年8月25日金曜日

はじめての一般公開イベント

新たな職場での初めての一般公開イベントがやってきました。
大学のオープンキャンパスでの研究室見学です。
というわけで、今年もやりますコケムシ展示。
研究室内での展示となるため、
今回からは顕微鏡を使った観察も導入してみました。
観察するのは、先日の真鶴実習で採集してきた潮間帯のコケムシです。

どれくらいの人が来てくれるのか未知数ですが、
ガイドツアーでまわってきてくれるようです。
果たして・・・

2017年6月2日金曜日

ラボの癒し要員

新しい研究室ではコケムシの飼育実験も開始しました。
付着生物研究を進める中でこれまで試してこなかった摂餌生態に関する実験です。
これからは毎日コケムシのかわいい触手冠を眺めることができます。

2017年5月31日水曜日

ぼちぼち動き始めます。

新年度を迎えて、研究室の立ち上げ等でバタバタしておりました。
今年からは学生と一緒に、三陸の付着生物や、
付着生物群集に生息する小型底生生物の調査を行います。
コケムシについては、摂餌に関する飼育実験も開始しました。
今後、研究室ではコケムシや付着生物の分類・形態・生態を幅広く扱っていきます。
沿岸生物学研究室・動物班(通称「コケムシ班」←勝手に命名…)、
いよいよ始動です。
さっそくみんなで三陸に設置する付着板シリーズを作りました。
この後、ロープが絡まって大変なことに…

2017年4月4日火曜日

30年ぶりの改訂です!

日本の付着生物研究において重要な参考書となってきた『付着生物研究法』が
30年ぶりに内容を大幅に更新・追加して『新・付着生物研究法』として出版されました。
私は6章「コケムシ類」を担当執筆しました。

『新・付着生物研究法 ー主要な付着生物の種類査定ー』
日本付着生物学会(編)恒星社厚生閣

表紙カバーに多数の付着生物の写真が載っており、なかなかのインパクトです。
ちなみに、裏表紙は…
なんと、コケムシの一点推しです!
(私が指定したわけではありませんよ。)

2017年4月3日月曜日

4年半、東北でやってきたこと

東北マリンサイエンスの東大グループ「プロジェグランメーユ」のHPにおいて、
「研究者に聞く」というコーナーで私の研究を取り上げていただきました。


語ったことが大凡ありのままに掲載されていますので、
私がこの4年半どのような考えでどんな調査を行ってきたのか、
その概要がわかるかと思います。

また、今回は分類学や群体生物についても長々と語ってしまったのですが、
そちらについては、個別にコラムを用意していただきました。
感謝です!

「分類学」
「固着生物と群体性の不思議」

あと、おまけで「標本作製ウラ話」という漫画まで作成していただきました。
ドレッジ調査の標本作製までの過程がわかりやすく紹介されています。

「標本作製ウラ話」

2017年2月24日金曜日

固着してからも移動できます。

昨日は久々に大槌で潜って調査してきました。
休む間もなく、得られた大量のサンプルのソーティング・撮影・標本作製に突入し、
とても長い一日でした。

今回の調査はコケムシをメインとしたものではなかったのですが、
やっぱりコケムシがいると気になってしまいます。
アワビの稚貝の殻を覆うサンゴコケムシの群体。
生きている貝に付着するコケムシは一部の種に限られているようなのですが、
なぜそれらの種だけが付着しているのか…最近ちょっと気になっています。

2017年2月10日金曜日

大槌湾の生き物の多様性を調べ、その証を後世に遺す

お世話になっているプロジェクトが発行している広報誌『メーユ通信』で、
これまでに行ってきた研究内容の紹介を掲載していただきました。


これまで私が何を目指して、どんな調査を行ってきたのか…
伝えたいことは山ほどあったのですが、
なかなか限られた紙面でそれらを紹介するのは難しかったです。
大槌というフィールドに限定しても、多種多様な調査を行っているので…。

養殖漁業の復興に役立てられる、数年単位の成果を目指したものもあれば、
将来の漁業者の育成や沿岸地域の教育へとつなげる、数十年単位の成果を目指したもの。
さらに、いたってシンプルに生物学的な興味に基づく研究もあります。

そんな中で何を伝えるのが効果的かな~と考えた結果が、これでした。


「大槌湾の生き物の多様性を調べ、その証を後世に遺す」

もちろん実際には、ただ多様性を調べているわけではなくて、
そこから漁業現場や教育現場に還元できることも想定されているわけですけど。

どの研究も、海洋環境と生物相の変動を長期的に調べることに変わりはありません。
そのために調べていることは、今の大槌湾の生物多様性です。
そして、すべては標本を残すことで、数十年・数百年後までその証を遺すことになるわけです。

最初はこの内容で本当に大丈夫か!?と不安になったりもしましたが、
このプロジェクトの広報誌だからこそ、ここで書くことに意義があるだろうと思いました。

さてさて、果たして…

2017年1月27日金曜日

まだまだ面白いことがいっぱい

気がつけば、今年も始まって早一ヶ月が過ぎようとしています…。
大変遅ればせながら、今年もよろしくお願いいたします。

先週末、群馬県立自然史博物館で開催された自然史学会連合の講演会で、
コケムシに関する講演を行ってきました。
群馬県は海なし県ということで、淡水コケムシについても写真を交えて紹介してきたところ、
講演後に、かなり貴重でものすご~く面白い観察例を伺うことができました。
淡水コケムシもまだまだ面白い発見がたくさん出てきますね!

今年もコケムシの多様性とユニークな生態について、
実際の研究紹介を交えながらたくさん紹介していきたいと思います。
自然史学会連合講演会のパンフレットの一頁。
美しい…まるでアカリコケムシが加盟学協会を祝福しているかのようです。