2015年7月31日金曜日

初披露:復旧した姿と最新の研究

気がつけば、もうすぐ7月が終わろうとしています。
今月は、大槌で震災後初となる国際沿岸海洋研究センターの一般公開が開催されました。

沿岸センターは、大槌湾の蓬莱島(ひょうたん島)を目の前にした立地にあります。
4年前の震災では、3階建ての建物の3階まで波にのまれてしまいましたが、
現在は仮復旧を進めてようやく調査研究を行うための環境が整ってきました。

今回の一般公開に向けての準備では、こんな作業もありました。
津波で割れたままになっていたガラスの撤去です。
このままでは危ないですからね・・・。

震災はもう4年前のこと・・・
でも、ここにはまだ当時のままの状況が至る所に残っています。
そんな中でも、私たちは様々な規模で復旧を進め、調査研究を続けています。
今回の一般公開では、そんな姿も見てもらえればと思いました。

1階では普段の調査で実際に使っている様々な観測機器を展示。
わかりやすい解説付きでした~。

こちらは震災後に新しく建てた上屋。
この中では、いくつかの体験コーナーと共に・・・
大槌で得られた生き物の標本も展示しました。

調査で実際に使用する機材を交えて、研究の方法についても説明しました。

また、今年から導入されたROV(遠隔操作水中無人探査機)も展示。
これまでに撮影した大槌の海底の映像を上映しました。
(コケムシもバッチリ映ってます!)

上屋の隣に建った新しい飼育実験棟では・・・
水槽や研究紹介のパネルが展示されています。

大槌湾の生き物たちを入れたタッチプール

タッチプールではじっくり観察できないような小さな生き物のために、
水槽による展示も行いました。

ヒドロ虫がつくった殻を背負うイガグリホンヤドカリ・・・
の背後にサンゴコケムシ!

センターの屋上からはひょうたん島がよく見えます。

今回の一般公開、震災前の規模や盛況さにはまだまだ程遠いかもしれませんが、
これからも少しずつ発展させていきながら、毎年開催していきたいと考えています。

2015年7月17日金曜日

人力ドレッジ

さて、連日報告してきたうみさわ会の調査報告も最終回となりました。
最終日は、ドレッジ調査を行いました。
今回使用したドレッジは、5年前に購入した私物ドレッジ&ロープ(200 m)です。
5年前に黒潮生物研究所で使用して以来、二度目の調査です!
(このドレッジ、高知での調査でしか使ったことがないという事実が判明・・・)

男5人が船に乗り込み、ドレッジとロープを積んで颯爽と海に繰り出したわけですが・・・
魚探が不調で水深がわからず、一度港に戻りました。

地元の方に助けをお願いしてもらったところ・・・
なんと!水深を調べるためだけに船を出してくださる方が・・・!(TーT)
ありがたいことです。本当に、本当に、感謝です!

そんなわけで、今度は二隻で海に繰り出します。
これまで数々のドレッジ調査を行ってきましたが、
二隻がかりでのドレッジ調査は初めての経験です。

さて、調査地点に到着して水深を教えてもらい、いざドレッジ投入!
十分なロープを出して、あとはゆっくり曳きます。
5分後、いざドレッジを揚収しようとしたところ・・・
あれ? ラインホーラーが動かない!?
なんと、魚探に続いてラインホーラーも機能停止しておりました。_(_ _;


と、いうわけで・・・

男5人がかりで手引きでドレッジを揚げることになりました。
最初はサクサクとロープを引き上げていったのですが、
ドレッジが船の真下に来たところで、一気にずしりと重さが・・・

でも、これにはきっとコケムシやゴカイやクモヒトデや動吻動物の重さも加わっているはず!
そう思って頑張ったんです。

そう信じて・・・


しかし、無情にも、あがってきたドレッジは空っぽでした(T0T)


その後も挑戦しましたが、結局、3回連続でからっぽ。
もう泣きそうです。
(もはや写真を撮る余裕もなく・・・)
錘とチェーンの位置を少し前方にずらして、4度目の挑戦。
体力的にも精神的にもこれがラストチャンスでした・・・

が! 4度目にして、ついに砂が採れたのでした!
その後、目的のコケムシも採集することができました。
スナツブコケムシです!

あと、こんな子も採れました。
セミエビ(?)のニスト幼生です。
透明な体と円らな瞳が可愛いかったです(´▽`

こうして、最終日の調査も無事に終えることができました。
とにかくご協力いただいた皆様に心から感謝です・・・!

2015年7月10日金曜日

いろんな仲間がいるんです

潜水調査で確認された付着生物は、コケムシやサンゴだけではありません。
たとえば・・・

 
ホヤの仲間とか

曲形動物(スズコケムシの仲間)なんかも。

いや~美しい!

ちなみに、曲形動物(Kamptozoa)は、過去にはコケムシ(Bryozoa)に含まれていましたが、
現在はコケムシとは異なる独立した動物門であるとされています。
コケムシでは肛門が触手冠の外側にあるのに対して、曲形動物では触手冠の内側にあるため、
前者を外肛動物(Ectoprocta)、後者を内肛動物(Entoprocta)と呼ぶこともあります。

2015年7月9日木曜日

サンゴやイソギンチャクの仲間

高知の調査では、コケムシ以外にもいろんな付着生物がみられました。
例えば刺胞動物。
サンゴやイソギンチャクの仲間です。

でっかいウミトサカの仲間。
いわゆるソフトコーラルと呼ばれるものです。

岩肌にはハネガヤの仲間がビッシリ・・・!
これはヒドロ虫の仲間です。
美しいですね・・・(´▽`

こちらはカラマツの仲間。
六放サンゴのツノサンゴ目に属する仲間です。
クロサンゴとかウミマツとか呼ばれたりしています。
ムチカラマツは潜水調査でもよく見かけますが、この種類は珍しい!(゜▽゜

ちなみに、ムチカラマツにはこんな子が乗っかっていることも・・・

あと、砂泥底には小さなウミエラもいました。
えっと・・・これは付着生物とは言えないかも(^^;
このウミエラは、骨軸が先端部で折れていました。
過去に何があったのでしょうか・・・?

2015年7月8日水曜日

岩の下(採集サンプル編)

前回紹介した岩の下に付着していた起立性のコケムシたち。
採集したものを順に紹介していきましょう!

「ふさふさ」した群体。
まさに見た目のとおり、フサコケムシの仲間(Bugula 属)です。
でも、本種は鳥頭体をもつので、いわゆる「フサコケムシ(和名)」とは別種です。
淡い赤みが美しい・・・!

「ひらひら」した群体。
じつはこれもフサコケムシの仲間(Bugula 属)です。
もちろん、上の赤い「ふさふさ」とは別種です。
鮮やかな緑色がきれいですが、標本にすると色は抜けてしまいます・・・

「もさもさ」した群体。
こちらはジュズツナギコケムシの仲間(Catenicella 属)です。
よーく見ると、個虫が関節で連なっています。

そして、最後は・・・

思わず水中で「おおっ!」と叫んだ群体。
大きかったので、観察したのはその破片です。
こちらはBiflustra 属の仲間。
科レベルでは、昆布などに付着するアミメコケムシの仲間とされています。

2015年7月6日月曜日

岩の下

「うみさわ会」の潜水調査では、岩の下も覗いてみました。

すると・・・

ふさふさ

ひらひら

もさもさ

おおっ!

こんな感じで、いろんな形をした起立性のコケムシ群体が付着しています。

2015年7月5日日曜日

石の下に

「うみさわ会」の潜水調査では、とりあえず足下の石をひっくり返してみました。
すると・・・
オレンジ色のものがびっしり!
これ、全部コケムシです(゜▽゜

小さな貝殻を拾ってみても・・・
やっぱり付いてました(^^)
まさにコケのようですね~。

ほかにも・・・
こんな紫色のコケムシも。
こちらはハナザラコケムシの仲間です。

あと、こんな珍しい子も見つけました。
スズメガイダマシの仲間です!
カサガイのように見えますが、これでも腕足動物(シャミセンガイの仲間)で、
殻の中には触手冠が隠れています。

ちなみに、この子は瀬戸内海や大槌湾で得られているものとは別種のようです。
日本のスズメガイダマシ科の多様性も、
これまで考えられてきたより全然高そうですね。

2015年7月4日土曜日

さわやかに・・・

先週末は高知県の黒潮生物研究所にお邪魔して、「うみさわ会」に参加してきました。
「うみさわ会」とは、様々な分類群を対象とする若手研究者が一堂に会して、
海(うみ)の生物について爽(さわ)やかに」調査やディスカッションを行う集まりです。
(「騒(さわ)がしく」という説もあったりなかったり・・・)
第1回目から参加し続けて今回で4回目、
今回は潜水調査とドレッジ調査を行ってきました。

潜水調査の二日間は、あいにく小雨まじりの曇り空でしたが・・・


久々の南の海は・・・

こんな珊瑚礁や岩礁帯とか。
(付着生物バンザイ!)

さらに深く潜ると・・・

こんな素敵な砂泥底とか。
(いい感じの底質!)

とにかく興味深い環境だらけでした!

う~ん。
ついつい砂泥底に目が行ってしまうのはクセですかねぇ・・・(^^;