2014年10月27日月曜日

ご案内

これまで コケムシWebsite の片隅で綴ってきた『こけむしぶろぐ』ですが、
この度、『コケムシWeb図鑑』の立ち上げ等に向けて、サイトのリニューアルを行います。
それに際して、『こけむしぶろぐ』もこちらの新規サイトへと移転いたしました。
これからはこちらのサイトにて、日々コケムシについて綴っていきたいと思います。

たまには山へ

[前サイトからの移設記事]

こちら大槌も台風が通り過ぎて、ようやく雨風がおさまってきました。

そんな台風が迫っていた先週後半は、論文執筆と標本観察で研究室に籠もっていました。
土曜日の午後、さすがにディスプレイとサンプルを眺めるのに疲れたので、
マストのお肉屋さんで買ったカツサンドを携え、ふらっと新山高原に行ってきました。

強風のため、風車がヒュンヒュン鳴っていました。


展望台に着くと、大槌湾を望む双眼鏡を発見!

覗いてみると…

ひょうたん島とセンターが見えました!

少し寒かったですが、山頂の方は紅葉も綺麗でした。
大槌町内からも意外と近く、ちょうど良い気分転換になりました~。

帰り道を間違えて遠野まで出てしまいましたが、お気に入りの笛吹峠を走れてそれはそれで楽しかったです(^^ヾ

6 Oct. 2014

KOKEMUSHI ART

[前サイトからの移設記事]

先日、友人宅にお邪魔した際、すごいものを見つけました。

これ、なんて言うんでしょう? マット?
いや、そんなことはどうでもいいわけで… 問題はそのデザインです。

お花でしょうか? いえいえ、違います。
これはどう見ても、コケムシです!
しかも、Cupuladria属という自由生活性のコケムシです。

「どうせ網目模様が少し似ているだけでしょ~」 とか思っていませんか?

では、どれほど似ているのか、電子顕微鏡(SEM)写真と比べてみましょう。
(from O'Dea et al. 2008)

ほらね?
完全に一致です!

25 Sep. 2014

秋の気配

[前サイトからの移設記事]

今日は秋分の日ですね。
そういえば、先日調査で潜った沖縄の海にも、すでに秋の気配が訪れていました。

これまで、沖縄の海に生息するコモチカエデコケムシは、冬に群体を形成すると考えられてきました。
しかし、最近の飼育実験の結果から、これまでの推定とは異なる仮説を立ててみました。
この子たち、じつは夏の間に成長を開始しているのではないかと…。

そして…
先日の調査では、予想通り、成長を開始したばかりの小さな群体を多数見つけました!


大きさ1~5 mmほどのコモチカエデコケムシの赤ちゃんです。

飼育実験のデータと合わせれば、かなり面白いことが言えそうです。
そろそろまとめられそうなので、論文を書くのが楽しみです☆

23 Sep. 2014

あなたはだれ?

[前サイトからの移設記事]

昨日の調査では時季はずれだったのか見つからなかったのですが…

春先には、こんなコケムシが名護湾の調査地点に多数生息しています。
海底に根のような空個虫を多数伸ばして起立する種類です。

実験室に持ち帰ると…

バイアルの中でも空個虫をぐんぐん伸ばして成長しています。

思い当たる種類がいるので、早速これを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察してみたのですが…


…あれ?
思っていたのと全然違います。

っていうか、あなたは誰?

生活様式と群体形態から、てっきりCruceschanellina 属かと思っていたのですが…
個虫の形態はどうやらCharacodoma 属もしくはFedora 属に似ているようです。
でも、Characodoma はこんな生活様式じゃないし、Fedora はこんな形の群体ではないはず…

まだまだ面白いコケムシが身近なところにも沢山いるんですね!

20 Sep. 2014

そこにいる・・・!身の回りのコケムシたち ~その3~

[前サイトからの移設記事]

気がつくと日常はコケムシに溢れている…そんな身近なコケムシたちを紹介するこのコーナー。
これまでは、根コンブに付着したコケムシや水族館で出会えるコケムシを紹介してきました。

『そこにいる・・・!身の回りのコケムシたち ~その1~』

『そこにいる・・・!身の回りのコケムシたち ~その2~』



さて、今回コケムシが付着しているものは… スイーツです!
はい。 スイーツです。
コケムシとスイーツの接点なんてどう考えても皆無のように思えますよね?
でも、じつは最近のスイーツはコケムシをアクセントにしているのです…!

私の職場がある岩手県の名物(?)に、アワビチョコというものがあります。


アワビの形をしたケースに、小さなチョコレートが沢山入っています。
中身は普通のチョコレートです。 甘いです。 スイーツです。

このアワビチョコのパッケージには、実際のアワビの写真が使用されています。
ちゃんと裏側には軟体部も写っており、なかなか生々しいデザインです。


さて…私たちコケムシ学者は、貝殻を見ると反射的に表面の付着物を見てしまいます。
初めてこのアワビチョコを見たときも、いつものように付着物を探してしまいました。


すると・・・

なんということでしょう!
なにやら沢山の付着物が付いている (写っている) ではないですか!

もうちょい拡大してみると、こんな感じ。

もう、おわかりですね?
そうです。これはまさに、コケムシの群体です!

さらに顕微鏡で観察してみたところ…

おぉっ!この小さな円の一つ一つはコチュゥ… ではなくて、印刷のドットです。
ちょっと拡大し過ぎました。。

とはいえ、コケムシであることに間違いはありません。
群体表面の質感や虫室の形態、さらにアワビに付着している点などから考えると、
Calyptotheca属でしょうかね~。


それにしても、アワビの殻なんていっぱいあっただろうに、どうしてこの殻の写真を使ったのでしょう?
もしかしたら、密かなコケムシファンが商品開発に携わっておられるのかもしれません。
視覚と味覚で二度楽しめる上に、生き物の勉強にもなる…
いいですね~コケムシチョコ! (←ちがう)

9 Sep. 2014

国際コケムシセミナーとアルキメデス

[前サイトからの移設記事]

先日、韓国で開催された国際コケムシセミナーに招待講演者として参加してきました。
韓国では今年、河川でオオマリコケムシが大発生して話題になっています。
そんな中、コケムシについて正しい知識を得ることを目的として開催されたのが、この国際セミナーです。
とはいえ、淡水コケムシ研究者は世界的にも非常に少ないのです…。
講演は英語/韓国語の同時通訳付きでしたが、みなさん熱心に耳を傾けてくださいました。
淡水コケムシ全般のお話から、日本における多様性や季節消長、日本でのオオマリコケムシの分布の推移について話しました。


最後にはパネルディスカッションも開催されました。
韓国の淡水コケムシについては、どのような種が生息しているかもきちんと整理されていないことから、
生態や防除の話と並行して分類についても理解を深める必要があることを力説してきました。

分類学の重要性を語ってきました!


さて、国際セミナーも終わり、夜の街に繰り出したときのこと…
道行く人が気になる物を持っていました。
それは、大きな長いコイル状のもの…
その形態が、もう、化石種のコケムシにしか見えなかったのです!

さっそく探してみたところ、ついに見つけました!

いた!

うおぉっ! これです! アルキメデス!!

ちなみに、本物のコケムシ化石の写真はこちら ↓

どうですか?
そっくりじゃありませんか?

このコケムシは、およそ3~3.5億年前の石炭紀からペルム紀の海に生息していました。
生きていた当時の姿は、螺旋状に巻いたレース状の群体だったようです。
レース状の部分は壊れやすかったため、コイル状の軸の部分だけの化石がよく産出します。
この形状がアルキメデスの考案したスクリューに似ていることから、
Archimedesという属名が付けられたユニークな種類なのです。

コケムシの多様で美しいかたちは、どんなに見ても飽きないですね~(´▽`)

4 Sep. 2014

南方からの訪問者

[前サイトからの移設記事]

8月初旬、大槌湾の隣の船越湾の定置網に、珍しい生物が訪れました。

まるでエイリアンです。

あまりの珍しさに、しばらく撮影会がつづきました。

もちろん、宇宙からやってきたわけではありません。
南の海から黒潮に乗ってやってきました。

じつはこの生物、イセエビ下目(イセエビやウチワエビの仲間)の幼生なのです。

顔を見ると、たしかにエビっぽいですね~。

正面から見ると、髭を生やしたおじいさんのようにも・・・

フィロゾーマというこの幼生、別名『ジェリーフィッシュライダー』とも呼ばれます。
その理由は、この幼生がクラゲ(ジェリーフィッシュ)に乗って移動するから。
じつは、フィロゾーマ幼生はクラゲに乗り、クラゲを食べながら移動するのです。

三陸の海にイセエビやウチワエビはいないので、おそらくクラゲに乗ったまま流されて来たのだと思われます。
せっかくなので、水槽で飼育してみることにしました。

ポンプの吸込口やエアレーションの泡から守る仕組みを簡易的につくりました!
流れに乗ってくるくる回りながら泳ぐ姿がかわいいです。

しかし、ここで最大の問題が…
餌がありません。
クラゲが採れれば良かったのですが、なかなかクラゲが見つからなかったのです。
仕方なく、アサリの身やイガイの生殖腺を与えることにしました。

でも…
残念ながら、お亡くなりになってしまいました(;_;)
この死を無駄にしないとの思いで、綺麗な標本を作製しました。

これからは、珍しい訪問者の貴重な記録として、学術的に生き続けていくことでしょう。
そして、標本というかたちですが、普及活動などで人々を楽しませてくれれば…(>_<。)

27 Aug. 2014

一年間、お疲れさまでした。

[前サイトからの移設記事]

先週は大槌湾に設置した付着板の調査も行ってきました。
3ヶ月に一回のペースで付着板を交換してきましたが、設置から一年が経ち、
ロープの老朽化もあるので今回はシリーズ丸ごと回収してきました。
今回もコケムシやホヤがたくさん付着していました~。

ロープを保護する塩ビパイプにもたくさんの付着生物が・・・


付着板シリーズを海底から起立させるために活躍してくれていたのが、この耐圧の一尺二寸玉です。

一年間、水深20mの海中に付着板シリーズを吊してくれていました。
ロープもすっかり茶色くなっています。

じつは、この浮き玉を包んでいるロープは、一年前に自分で編んだものです。
一本のロープをこのように編んでいき・・・

ある程度編み終えたら、浮き玉を包んで・・・

最後に上をキュッと縛って出来上がり!

今回、回収した付着板シリーズは傷んだロープなどを処理した後、新しいものを再設置する予定です。
ちなみに、この浮き玉も綺麗にして再利用します。
一年間、お疲れさまでした。そして、新たな調査でもよろしくね!

14 Aug. 2014

『弥生』初のドレッジ調査

[前サイトからの移設記事]

昨年11月に竣工し、今年度から本格運用を開始した海洋調査船『弥生』。
3年前の震災で行方不明になった先代の『弥生』に代わり、様々な調査観測での活躍が期待されています。

今週は、この新『弥生』に乗って、大槌湾口部でのドレッジ調査を行ってきました。
2ヶ月前に悪天候のため中止となっていた調査のリベンジです。


ドレッジとは、海底の泥や砂と一緒に生き物を採集する底曳き網の一種です。

コレを海底に下ろして曳きます。

ちなみに、ドレッジのお尻に白い網が付いていますが、これは「サンゴ網」と呼ばれています。
ドレッジの枠にうまく入らなかった生物を絡め取るためのものです。

台風の影響が心配されましたが幸い波も穏やかだったので、さっそく調査開始です!
ドレッジを海底に投入して曳き始めました。

こうしてワイヤーを手で押さえると、ピョンピョンと震動が伝わってきます。
ドレッジが着底して、ちゃんと海底を掻いている証拠です。
(絶対に素手では触れないように・・・!)

5分ほど曳いたら、網を巻き上げます。

海中にドレッジが見えてきました!

さて、成果は…
貝と単体サンゴと…でも、ドレッジの大きさの割には少ないですね。

じつは、1回目は最後に根に当たってヒューズが切れてしまい、中身が海中に落ちてしまったのです。

そこで、すぐに2回目を実施。
今度はどうかな…

あっ・・・

泥がパンパンに詰まってます!

こうして、大量の泥と共にいろんな生き物が採れました。

大小さまざまなヒトデとか

縞模様の奇妙なヒモムシという動物など。

あと、コケムシも採れました!
スナツブコケムシの仲間。
砂泥底に棲息しているちょっと変わったコケムシです。

1~3回目の調査はすべて泥場だったので、最後は少し場所をずらしてみました。
沖の少し急な斜面を狙います!

その結果…
貝殻混じりで、いい感じの砂質です。
でもこれ、じつは砂ではなくて、ほとんどすべてコケムシの死に殻なんです。
別の場所に棲息している起立性のコケムシの折れた枝が、この場所に溜まっているようです。

こうして、生まれ変わった『弥生』による初めてのドレッジ調査は大成功に終わりました。
なお、今回の調査では、震災前は砂質だった場所に泥が堆積していることも明らかとなりました。
今後は、こうした海底の状況やそれに伴う生物相の変化についても調べていきたいと思っています。

8 Aug. 2014

久々に切ってきました

[前サイトからの移設記事]

ご無沙汰しておりました・・・
7月は前の職場である国立科学博物館にお邪魔して、
コケムシの分子実験を行う傍ら、新たな箒虫の切片を作成しておりました。

炭酸カルシウムの骨格をつくらない櫛口目コケムシや箒虫動物の観察には、切片の作製が欠かせません。
パラフィンで固めた標本をミクロトームという装置で厚さ数μmにスライスしていきます。
これをプレパラートにして、消化管の形態を観察したり縦走筋の数を数えたりするのです。
今回はその様子をご紹介します。


まず、パラフィンに包埋した箒虫の標本を削りだして、木のブロックに貼り付けていきます。
白いお皿はパラフィン包埋に使用したもの。
手前の細長い四角形をしたものが、削り出した試料です。

光に透かすと箒虫の姿が見えます。

スパチュラをアルコールランプで熱して、溶かしたパラフィンを接着剤代わりにします。
やけど注意!

ミクロトームにセット完了。
いよいよ切ります!

次々と箒虫の輪切りができていきます。

パラフィン切片はこうして連続切片を作製できることが大きな利点です。
そのため、すべての切片を撮影し、そこから元の形を立体的に復元することも可能なのです!

びよ~ん。

ちなみに、普段は大きめの筆に連続切片を巻き取ったりして回収しています。
今回は撮影のために柄付き針で持ち上げています。

スライドグラスに敷いた水の上に並べられた連続切片。
箒虫の輪切りが沢山並んでいます…

これを温めると、しわしわだったパラフィンがスーッと伸びて、綺麗な切片ができあがります。

あとはこれを染色してカバーグラスをのせて封入すれば、プレパラートの完成です!

27 Jul. 2014

みつけた-!

[前サイトからの移設記事]

先日の大浦湾での調査につづいて、今回は名護湾でも潜って調査を行ってきました。
大浦湾の観測を中断したこともあり、急遽こちらで観測を開始することにしたわけです。


そして…


みつけてしまいました。
この時期にはほとんどいないと思われていた、コモチカエデコケムシ!


最盛期ではないからか、どことなく群体の形が奇妙なことになっていますが…
見た目は予想以上に元気そうでした。

明日からの台風、こちらは予想より被害が少ないことを祈っています。
コケムシと観測機器も無事だといいのですが…(ヒヤヒヤ)

7 July 2014