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ご無沙汰しております。
調査で潜ったり船に乗ったりしていて、しばらく更新が途絶えてしまいました...。
これからは撮りためた写真を使って調査の報告をしていきます!
先週は東北海洋生態系調査研究船「新青丸」に乗船して、東北沖での底生生物調査に参加してきました。
「新青丸」は昨年完成したばかりの最新鋭の調査船で、東北の海が東日本大震災でどのような影響を受けたのか、海洋環境から海底地形、生物に至るまで様々な側面から調査を行うことができます。
とはいえ、これまで本船では底生生物の調査採集を行ったことはありませんでした。
“生態系” 調査研究船なのだから底生生物を調べない手はない...ということで、今回この船で初めてビームトロールを曳かせてもらいました。
ビームトロールというのは簡単に言うと底引き網の一種で、
海底に棲息している底生生物を採集する道具です。
こうして大きな網の中に入ってきた小さなコケムシたちを、今回は3種類ご紹介します。
まずはアミコケムシの仲間。
レース状の美しいコケムシです。
海外では「レース・コーラル」と呼ばれたりもします。
もちろん、コーラル(=サンゴ)ではなく、正真正銘のコケムシですけどね!
貝殻の中に付着していたり、ヤドカリが背負った貝殻に付着していたり...
それにしても、お洒落なヤドカリさんです。
アミコケムシを飾るなんて、なかなか良いセンス...
つづいて、オウギコケムシの仲間。
こちらは国立科学博物館で昨年開催された特別展「深海」で展示したものと同種です。
ひらひらとした海藻のような群体ですが、葉っぱのような部分を拡大すると...
ちゃんと小さな部屋に分かれていて、その中には個虫が入っています。
ちなみに、群体の根本側にたくさん見える茶色い点は「褐色体」と呼ばれるもので、
死んだ個虫が吸収されようとしているところです。
個虫が死んでも部屋(虫室)は残るので、
いずれそこには新しい個虫が再びつくられる仕組みになっています。
最後に、ヤワコケムシの仲間。
こちらは上記2種とは異なり、炭酸カルシウムの硬い殻をつくらない種類です。
キチン質の柔らかい群体は一見するとコケムシには見えませんが、しばらく海水に入れて様子を見ていると、ちゃんと触手冠が出てきて正真正銘コケムシだということがわかります。
それにしても、なかなか見慣れない奇妙なかたちをした群体です。
研究室に持ち帰って顕微鏡で詳細な観察をするのが楽しみです!
今回の調査航海では、この他にも多数のコケムシや底生生物が得られました。
これらの生物について研究が進めば、震災後の東北の海にどのような生物が棲息し、それらがどう関わり合っているのかが明らかとなってくることでしょう。
12 Mar. 2014