2016年12月30日金曜日

2016年・潜り納め

本日、潜り納めをしてきました。
なぜか僕が潜る日はいつも風と波が強くなるのですが、今日はなんとか持ち堪えてくれました~。


水面に戻ったらやはり風とうねりが強くなっていましたが、
岸向きだったので、ふわふわ漂っている間に岸に漂着することができました。


では、よいお年を~。

2016年12月7日水曜日

日本のコケムシの多様性は・・・?

新たに論文が出ました。

http://www.springer.com/jp/book/9784431564300

タイトル通り、日本の動物の多様性をまとめた書籍の中で、
私は日本のコケムシの多様性に関するレビューを行いました。

論文へのリンクはこちら。
http://link.springer.com/chapter/10.1007/978-4-431-56432-4_24

日本で得られるコケムシの種,群体形態,生活様式の多様性を紹介するとともに,
先行研究で報告された種数を各海域ごとに整理しています。

他の方々の論文のタイトルも、かなり多様な動物群を網羅した内容となっており、
現状のレビューとして、非常に充実した書籍だと思います。
各論文単位での購入・ダウンロードも可能となっているようです。

2016年11月21日月曜日

糸こんにゃくのたらこ和え

タイトルがアレですが、決してお料理ブログと化したわけではありません。

先日、いつもお世話になっている漁師さんから「糸こんにゃくみたいなのが出た」と連絡をもらい、
さっそく調査に行ってきました。

なんとな~く心当たりはあったのですが、実際に採集したのがコレ。
完全に、「糸こんにゃくのたらこ和え」です。
気になる方は、画像検索してみてください。
そっくりなものがお皿に盛られています。

じつはこれもコケムシです。
ホンダワラコケムシという種類で、昔から船底などに付着する問題児として有名な子です。
全コケムシの中で、群体の大きさで世界最大になるとも言われている種です。

シャーレに入れてみると、萩をモチーフとした家紋のようです。

ちなみに、自活個虫は「糸こんにゃくのたらこ和え」で言うところの「たらこ」の部分です。
つまり・・・
こんな感じで、透明な枝の上に並んでいます。

それにしても、美しい二重螺旋ですね~(´ー`*)

2016年11月12日土曜日

さくらっていうか・・・カエデでしょう。

鹿児島土産のクッキーにプリントされた、
ゆるキャラ「さくら」。
顔の両側に、小さな芽体が並んでいます。

これは・・・
「さくら」っていうか、「カエデ」でしょう。

どう見ても、コモチカエデコケムシです。

ちなみに・・・
直立した胴体は「空個虫」ですね、はい。


「ぐりぶー」という人もいるようです。
あー、こちらの芽体は矛型なので、
落ちたら休眠せずすぐに成長するタイプですね。
たしか奄美大島のコモチカエデコケムシの芽体は、こちらのタイプでした。

では、奄美大島の子の芽体を見てみましょう。
おぉ! 個虫の境界線まで完全に一致です!

なんて素敵なところなんでしょう・・・鹿児島県!
もう、コモチカエデコケムシの妖精さんにしか見えません。

2016年10月21日金曜日

柏キャンパス一般公開2016

今日と明日、東京大学柏キャンパスで一般公開が開催されています。
大気海洋研究所のタッチプールの横では、
今年もコケムシに関する展示を行っています!
いよいよ例年の使いまわしが多くなってきたので、
新たに、電顕観察中の大槌湾のコケムシ標本を、写真と併せて並べてみました。

あと、先月末に採集してきたコモチカエデコケムシの群体も生体展示中です!
実験で成長開始したばかりの芽体たちも展示しています~♪

2016年10月19日水曜日

とにかくコケムシを採るために・・・

ROVの採集装置の改造を試みました。
大きな起立性のコケムシ群体をまるごと採るために・・・!

ホームセンターで材料をそろえて工作開始!

ロボ的な何かが組み上がりました。

完成形がこちら。
ソーラーパネル広げた探査機みたい。


そして、ROVに装着した状態がこれ。
う~ん・・・ちょっとわかりづらいですが、
採集装置が黒いフレームに取り付けられています。
プランクトンネットとネット保護用シートが目立ってますね・・・

ビークルとフレームの間にコケムシを入れて、
全速後進で根元から折ったコケムシがネットに入るという算段です。

キャニスター用カメラの映像を見ながらフレームでコケムシを包囲し、
自作の採集装置で根元から折る計画です!



しかし・・・

大きな誤算がありました。。


水中に入ったとたん、キャニスター用カメラに採集装置が映らなくなりました!Σ( ̄□ ̄;
フレームも一部しか映らず、もはや勘でコケムシを包囲するしかない始末・・・


その原因は、「屈折率」。
水温にもよりますが、海水の屈折率がおよそ1.34とすると、
水中では陸上の1.34倍に拡大された映像が見えるわけですね。

えぇ・・・たしかに、フレームとプランクトンネットの一部しか見えませんでしたよ・・・
ずっと陸上でシミュレーションをしていたため、すっかり忘れていました。。。_(_ _;


あと、当然ながらプランクトンネット保護シートがメインカメラの視界を遮ります。
キャニスター用カメラが使えなくなった今、
ROVは横目で流れていく景色を見ながら彷徨うだけの状態に・・・(T。T)


結局、早々にスラープガンとマニピュレータを使った従来の採集方法に戻しました。。


でも、まだ諦めてはいません!
今回作った採集装置をスクレーパーと併用して、
改造したマニピュレータを使った新たな採集方法を考案中です。

次こそは、でっかいコケムシ群体を隙間に棲んでいる生物もろとも採集してみせます!

2016年10月10日月曜日

淡水コケムシの国際シンポジウム

先週は、韓国で開催された淡水コケムシの国際シンポジウムに参加してきました。
2年前に韓国でオオマリコケムシがちょっとした社会現象になり、
今回は2年間の調査の報告会といった感じです。
2年前のシンポジウムでの発表がきっかけで、コケムシに対する誤解もだいぶ解けたようで、
今回はテレビカメラに囲まれるといったこともなく穏やかに進みました。

プログラムの表紙デザインがオオマリコケムシですね~!

今回は招待の連絡が来た時点で開催日まで一ヶ月をきっていたのですが、
なんとか日程調整と準備も間に合いました。
懐かしい出会いや新たな出会いもあり、それなりに有意義な会議となりました。

せっかく淡水コケムシに関心をもっている人が多いのですから、
防除に向けた研究もいいけど、
これからは生き物そのものの生態をもっと調べたらいいのにな~と思いました。

2016年10月1日土曜日

サクッと切れました。

コケムシに限った話ではありませんが、
海で調査をしていると、いろんな付着生物に遭遇します。
ときには、大事なロガーを付着生物が覆い尽くしてしまっていることも・・・

今回の調査では、海底に半年間設置してあったロガーを潜って回収してきました。
ロガーの表面が付着生物で「もさもさ」になっていたので、
水中で掃除してから持ち帰ろうと思って握りしめたところ・・・
親指をザックリいきました。
一瞬どうなることかと思ったのですが、奇跡的に流血は免れました。
グローブが守ってくれたみたいです!

で、調査を終えてノートに記録を付けようとしたところ、
紙が傷口にジャストフィット。

トドメを刺してしまったようです・・・イタタ。。

2016年9月26日月曜日

大槌湾口部のコケムシ

走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したコケムシの写真をずらっと並べてみました。
すべて大槌湾の湾口部で得られたコケムシたちです。
大槌のコケムシは過去にほとんど報告されていないのですが、
こうして並べてみるとなかなか多様ですね。
中には津軽海峡が模式産地のコケムシも何種か得られていて、
そのあたりも興味深いです。

2016年9月16日金曜日

君の死を無駄にはしない・・・!

返り討ちにした蚊を、隅々まで観察しました。
教材用の画像として使わせてもらいます。

複眼
つぶつぶ。

触覚
コケムシに見えなくもない・・・

細かな毛が生えています!バイオミメティクスに活かせそう。

残念ながら針は格納されていて観察できず。。

おしり
じつはオシャレなんですね~。

2016年9月15日木曜日

もう夏も終わりです

先日、電顕観察中に襲ってきたので、返り討ちにしました。


これで一匹も寄って来なくなればいいのですが・・・

2016年9月5日月曜日

ふるさと科


先日は、地元の中学生を対象とした課外授業を行いました。
台風被害のため海での実習はできませんでしたが、
映像や標本を交えて、大槌の生き物の多様性を紹介しました。

最後は、一人一人にROVのマニピュレーターを操作してもらって、
いろんなものを掴んでもらいました。
生き物を壊さずに採集することの難しさも伝わったかな~。

2016年8月24日水曜日

お仕事道具4


今回紹介する道具は、解剖ではなく、じっくり観察するときに使う道具です。
「コケムシならでは」のものが多いかも・・・

まずは、これ。
各種スポンジと粘土です。
コケムシの群体や付着基質はいろんな形をしていて、
なかなか見たい方向で静止させることが難しい場合もあります。
そんなときに、これらの道具を 「足場」 として使います。

つづいて、これ。
プラスチック製のスポイトの先端を切り落としたものが入っています。
じつは、こちらも用途は 「足場」 です。
ただ、もっと小さな群体を対象としています。
代表的なのが、スナツブコケムシの仲間。
円錐形をしているので、底面を観察する際には足場が欠かせません。

今度は「計る」道具。
ミクロメーターです。
顕微鏡で観察する際のスケールとして利用します。

最後は・・・
黒いベルベット風の厚紙です。
顕微鏡写真を撮影する際や、ちょっとした標本写真を撮る際に、シャーレの下に敷きます。

ちなみに、この厚紙はもともとは観察用に買ってきたものではなく、
研究室にお土産として置かれていたお菓子の箱の一部でした。

その名は 「さびえる」

大分のお菓子です。
そんな「ざびえる」(箱)の質感に一目惚れして、
使えそうな部分を何枚か切り出して持ち歩いています。
しわにもならず、とても便利です。

2016年8月23日火曜日

お仕事道具3

昨日に続き、コケムシ観察道具の紹介。
今度は 「切る」 道具です。

まずはハサミ。
先端がゆるやかに湾曲しているものや、細かい解剖用の精密バサミなど、いろいろあります。

つづいて、替刃のメス。
こちらは大型の生物の解剖にも使います。
あと、コケムシが付着したカイメンなどを綺麗に切り分ける際にも便利です。

最後はこれ。
糸鋸の刃を適当な長さに切断したものと、デザインナイフ。
デザインナイフはそれ単体でもメスと同様の使い方ができますが、
替刃を糸鋸に替えると、小型のノコギリにもなります。

コケムシの標本調査では、電顕観察のために古い標本の枝を折る必要があります。
でも、闇雲に折ってしまうと、標本が必要以上に破損してしまう恐れも・・・
そこで活躍するのが、この小型ノコギリです!
なるべく標本の全体像に影響が少ない場所を選び、
顕微鏡下で少しずつ標本をゴリゴリと切っていきます。

2016年8月22日月曜日

お仕事道具2

コケムシ観察用のお仕事道具ですが、
ケースの中身(一部)をご紹介します。

今回は 「つかむ」 道具をご紹介。

まずはピンセット。
先端の形状が異なる精密ピンセットいろいろ。
ほとんどは左のような通常の先端のもので事足りますが、
右のように湾曲した先端をもつものが便利な場合もあります。

こちらはクロスピンセット。
普通のピンセットとは逆で、握ったときだけ開きます。
枝状の標本をいろんな角度から観察するときに使います。

こちらは微生物ピンセット。
硬いもので掴むと壊れてしまうような繊細なものに使います。

最後は、筆。
筆で掴むことなんてできるのかと思われるかもしれませんが、
ピンセットで掴むと壊れてしまうような、群体の小さな破片などを移動させるときに活躍します。
特に、博物館での標本調査の際には必需品です。
あと、古い乾燥標本に沈着したゴミを取り除いたりするときにも使えますよ~。

2016年8月21日日曜日

お仕事道具1

コケムシの群体は、種類によって形も大きさもさまざまです。
サンゴのように大型のものもいれば、糸くずのように微小で繊細なものも…。
そのため、コケムシの観察では、目的や種類に応じていろんな道具を使い分けます。

そんな道具類を整理して持ち運ぶのに便利なのがコレ。
画材屋さんで買ったもので、もともとは筆などを整理するケースです。

左側のポーチは取り外すこともできて・・・
その下にもポケットがあります。

折りたたんで持ち運べるので、便利です。

2016年8月14日日曜日

パネル常設展示

一般公開で作成・展示した 『生き物紹介パネル』 は、
現在も沿岸センターの廊下に常設展示しております。

まずは、図鑑のようにいろんな種を並べて紹介したパネルたち。
甲殻類から・・・

軟体・棘皮動物。おまけにヒモムシも!

さらに・・・
ROVの紹介と、実際に撮影した海底の様子を紹介したパネルもあります。

そして、もちろん・・・ 
コケムシのパネルも!
こちらは一点モノの大きな写真です!

大槌湾で震災をまたいで30年ぶりに発見されたサガミユビヤワコケムシとか、
付着板の上にみられる、幾何学的な美しい群体とか(≧▽≦)

やっぱりコケムシは美しいなぁ~(TーT)しみじみ

2016年8月13日土曜日

おおつち海のいきもの図鑑

今回の一般公開に向けて、大槌の海に生息する動物の簡易的な図鑑を作成しました。
その名も 『おおつち海のいきもの図鑑』 

A3サイズで、三つ折りになります。

最近は各地の臨海実験所でこうしたフィールドガイドが作成されていますが、
じつは、いつか大槌版を作りたいと思っていました。
今回、センターの教員やポスドク、学生の力も借りて、これまでに撮り溜めた写真を総動員し、
ついに完成させることができました!
写真を提供してくれたみなさまに、心から感謝です!!

裏表に生き物の写真がびっしり。

写真と名前が載っている簡易的なものですが、ラミネート加工を施してあるので、
フィールドガイドとして、水辺でも安心して利用することができます。

ちなみに今回のコンセプトの一つは、
「なるべくいろんな生き物について知ってもらう」 です。
細かな種同定に使うものというよりは、
大槌の海にもいろんな生き物が暮らしていることを知ってもらうための導入ツール。

そのため、フィールドガイドとしてはちょっとマニアックな生き物も多数載っています。
たとえば節足動物門を見てみると・・・
なかなかフィールドで見かけることは難しそうなものがいっぱい。。

マイナーな動物門についても紹介しています。
これを見て興味をもってくれる人が100人に1人でもいてくれたら、僕は嬉しい・・・

もちろん、コケムシについても・・・!
なかなか他では見ない充実っぷりです!

あと、こうしたフィールドガイドとしては珍しいのが・・・
海鳥です。

漁でも観光でも、海に行けば必ず海鳥に出会いますよね。

海鳥たちも、魚を食べるなど、海を生活の場としている動物なんですね~。

『おおつち海のいきもの図鑑』 は、今後も改訂などしながら配布を続けていく予定です!
あと、この勢いにのって、このまま冊子体の図鑑も作っちゃおうと計画中・・・( ̄▽ ̄ヾ