2014年11月22日土曜日

ふさふさ・・・

東北の某所に設置した付着板
一月ほどでビッシリと覆われました。
赤茶色の海藻に見えるものは、すべてフサコケムシの群体です。
フサフサです。
もふもふです。
思わず撫でてやりたく・・・なりませんか?(ーー;

フサコケムシ Bugula neritina (Linnaeus, 1758) は、コケムシの中でも有名な種の一つです。
特に、本種から単離されるブリオスタチンと呼ばれる生理活性物質は、
抗がん剤やアルツハイマーの治療薬として期待されています。
いやぁ~~コケムシすごいっ!!(≧▽≦)
(本当はフサコケムシの共生細菌がつくり出しているんですけどね・・・)
ちなみに、ブリオスタチン(bryostatin)の 「ブリオ(bryo)」は、
コケムシ(bryozoa)の「ぶりお(bryo)」ですv( ̄▽ ̄)v

それにしても、一月でこんなに付くなら、これを沢山集めれば・・・と思ったりしますが、
どうやらブリオスタチンの収量はとても少ないようです・・・_(_ _;
付着板に付いたフサコケムシの群体をゴリゴリ磨り潰して必要量集めるのはちょっと厳しそうです。

2014年11月21日金曜日

触手冠~その後~


触手がバラバラになってしまいました。

通りすがりのウミウシに捕食されたのでしょうか・・・
それとも、ウミグモにチューチュー吸われてしまったのでしょうか・・・

でも、今回のコケムシバルーンはかなり長持ちしました。
おかげさまで、思う存分楽しませてもらいました~。
触手の合間から顔を覗かせたり、頭にかぶったり・・・

2014年11月12日水曜日

弱った触手冠

弱ってきたところまで本物にそっくりなコケムシバルーン。
どれくらいそっくりかと言うと・・・

(少し弱ったコケムシの固定標本)


どうでしょう?

不規則に縮れた触手たち・・・

完全に開ききらない触手冠・・・

むふふ。

2014年11月11日火曜日

触手冠-バルーン編-

そういえば、先週ぼくの代わりに椅子に座らせておいたコケムシバルーンたちですが、
一週間が経過してどんな姿になっていたかというと・・・


おっ! 触手冠が少しばらけ始めていますが、まだ形を保っています。
さすがにこのままでは仕事ができないので、別の椅子に座らせてみました。


不規則に縮れた触手たち・・・

完全に開ききらない触手冠・・・

うん。 このへにゃっとした感じは、まさに弱ってきたコケムシの触手冠にそっくりです!
個虫の弱っていく過程まで再現できているとは、素晴らしいですね!コケムシバルーン!

2014年11月10日月曜日

触手冠

大槌沖で得られる殻長4 cmを超える大きな腕足動物。
2010年のサンプルたち

震災前にはこんな感じでゴロゴロ採れていましたが・・・
先月の調査でようやく震災後にも無事に生息が確認できました。

しばらく海水に入れていると、殻を開いてくれて、触手冠がよく見えます。
美しいですね・・・触手冠(´▽`

2014年11月7日金曜日

歯医者さんの音

今日は同定依頼のあった標本観察を済ませた後、コケムシを削ったりしておりました。


コケムシの研究道具で欠かせないツールの一つが、このルーターです。
先端をダイヤモンドビットやドリルにして使用します。

コケムシは貝殻や石にもよく付着しているのですが、
大きな貝殻に付着したままだと観察や整理がしづらいことも多々あります。
そんなとき、このルーターが大活躍するわけです!

・・・が、人によってはルーターで硬いモノを削る音が幼少期の恐怖体験と結びついているらしく・・・
念のため、作業を始める前に周囲に確認をとるようにしております(^^;

ちなみに、最近の歯医者さんでは音を軽減させたドリルを用いたり、
ドリルそのものを用いない治療法も活用されているようです。

私は幸いにも幼少期に歯を削られた経験がないので、この音はコケムシを削る音という認識です。
歯医者さんに行ったとき、「おっ。どんなコケムシを削っているのかな?」などと想像してみれば、
きっと、もしかすると、少しは緊張が解れる・・・かも・・・

2014年11月6日木曜日

砂泥の中から見つけたお宝

先月のドレッジ調査で得られた、タマサンゴの仲間とスナツブコケムシの仲間です。
どちらも砂泥底に生息しています。

まずはタマサンゴの仲間。
泥を体に付けていることも多いので、一見すると生きているか分かりづらいこともあるらしい。。
今まで死に殻と思って標本にしてきた子たちも、もしかすると・・・(。。;

ちゃんと海水に入れてやると、こうして触手を伸ばしてくれます。
しばらくすると泥も落として綺麗なお姿に。

つづいてスナツブコケムシの仲間。
ちなみに、今回生体が得られたのは団扇型のFlabellopora 属だけでした。
左の子たちは死に殻ですが、右の橙色をした子は生きています。
右下から少し伸びている白い根っこのようなものが、海底で起立するのに用いていた空個虫です。

そういえば、この子たち、どちらも生きている時は淡い橙色や桜色をしていました。
泥の中からこれらを見つけ出したときは、綺麗なお宝を見つけた気分で嬉しくなります。

大槌ドレッジ調査

もう一ヵ月前のことですが、大槌で2回目のドレッジ調査を行いました。
今回は京都大学、鳥取県立博物館、和歌山県立自然史博物館、琵琶湖博物館から、棘皮動物、サンゴ、小型甲殻類の専門家が乗船。
台風の合間でしたが、今回は運良く絶好のドレッジ日和となりました。

風も波も穏やかで、難なく沖まで来れました。

まだいけるよ~とのことだったので・・・

せっかくなので、今まで網を曳いたことがない“大根”に向かいました。

さっそくドレッジ投入。

いかにも何かが潜んでいそうな切り立った斜面・・・ワクワクします!

・・・さて、今回は一回目でサンプルをたっぷり得られたので、
つづいて御箱崎沖に向かいます。
(船上作業のため写真が少なくてすみません・・・)

御箱崎沖に到着。

御箱崎を眺めながらドレッジを曳きます。

見えてきました。

よいしょ。

ぎっしり詰まっていると、重たくてなかなか持ち上がりません。

ドレッジに詰まった泥や生物をばんじゅうに洗い出します。

そして・・・
各分類群の専門家が群がります。


私たちマイナー生物の研究者は、こうして一度の調査で得られたサンプルからお互い必要な生物を探し出します。
さすが専門家が集まったことだけあって、これまで見逃していたような発見も多数ありました。

震災から3年半・・・震災後の大槌でようやくこの光景を見られる日が来ました。
今回の調査では、生きた単体サンゴやスナツブコケムシも得られました。
こうしてセンターを利用して得られた成果は、この先少しずつ発表されていくことでしょう。
同乗研究者のみなさまに心から感謝です!
私も頑張らねば~。

2014年11月4日火曜日

コケムシになりました

先日の一般公開で展示したコケムシバルーンアート。
一般公開終了後、なんと記念にもらいました~(´ー`)

柏ノ研究室に引き取られたコケムシ2個虫。
触手がちょっとくたびれています。

椅子にのせて並べてみました。
椅子の背もたれが虫室口を閉じる口蓋(operculum)です!

今週から大槌なので、僕の代わりに椅子に座らせてみました。
まるで椅子に座っていた僕がコケムシになってしまったようです。
ちょっとホラーっぽいですね・・・

もう1個虫を足下に置いてみました。
あー。。。いよいよ何かのパニック映画みたいになってきました。

せっかくなので、柏のデスクをこの状態で残し、私は大槌に向かいます。

コケムシ展示

先日の一般公開でのコケムシ展示風景です。

コケムシ研究紹介のチラシも作成・配布しました。
ご自由にお取りください~。

液浸標本は光を当てると綺麗です。
海藻に見えるこれも、もちろんコケムシです。

今回はコケムシ展示なので、サンゴに見えるのもすべてコケムシ・・・なんですが、
初日には「あ~サンゴの展示ね~」と言って通り過ぎる人が続出(T□T)
そこで、二日目は「サンゴではありません。コケムシです。」のパネルを追加。
すると・・・
「あ~サンゴ・・・えっ?サンゴじゃないの?コケムシってなに??」
と立ち止まってくれる人が続出!(゜▽゜)

そう!サンゴじゃないんですよ~。

今回のコケムシ展示は、コケムシバルーンの横で行いました。
解説中、ふと横に目をやると・・・
立派な触手冠が♪

まるで自分が小さくなってコケムシの群体に迷い込んだみたいです。 ゜~(´▽`

2014年11月3日月曜日

コケムシ・バルーンアート

気がつけば11月になってしまいました。
すっかり秋も深まり、そろそろ東北ではタイヤ交換の時期ですね。

先週は柏で大気海洋研究所の一般公開がありました。
昨年は台風のため一日だけの開催となってしまいましたが、
今年は晴天に恵まれ多くの方にご来場いただきました~。

大気海洋研究所の一般公開で恒例となっている海の生き物バルーンアート。
毎年さまざまな生き物がバルーンアートになっています。

2012年

2013年

製作しているのはここの卒業生で、夢を実現させるためバルーンアーティストになった須原さん。
海の生き物に接してきたからこそ、生き生きとした姿を再現できるんですね!

さて、そんなバルーンアート、今年のテーマは・・・
なんと、コケムシです!!(゜▽゜
コケムシのバルーンアートって、たぶん世界初じゃないかなぁ。。
まさか本当に実現する日が来るとは・・・感謝感激です(TーT

たくさん写真を提供して、触手冠の曲線とか難しい注文もいっぱい出してしまいましたが・・・
豊富な経験と技術、そして素晴らしい連携プレーで見事に完成させてくれました!

量産されていく触手冠

並べて・・・

完成です!

完成の瞬間、思わず呟いてしまいました。
「すごいコケムシ…!」(=「すごくコケムシらしさが出ている」の意)

きっと、コケムシ学者なら一目見てわかります。
「これは…イソギンチャクではない!コケムシだ!」と。
ちなみに、国際コケムシ学会のロゴにもそっくりです!

そんなわけで、今年はバルーンアートの解説も兼ねて、コケムシバルーンの隣で本気のコケムシ展示を行いました。

選りすぐりの標本展示は勿論のこと、コケムシ写真集も作製して並べています。
解説を交えた写真に加えて、電子顕微鏡で撮影した写真も多数収録!

多くの方々から、「コケムシの写真集はないのですか?」と尋ねられたので、
「いつか作製して出版したいと考えています」とお伝えしたところ、
写真集があったら是非とも買います!」と言ってくださいました!(T▽T
「ガウディの建築みたいで美しい・・・!」とも。
よかったね、こけむしぃ・・・出版できるといいなぁ(TーT
(出版社さま、是非ともお願いします・・・!)

今回の一般公開では、バルーンを指さしながら個虫の説明をするなど、自分も思う存分楽しませてもらいました。